2017年1月21日土曜日

読了メモ「人声天語」坪内祐三



読了。

2003〜2008年というから、
10〜15年前に月刊誌に連載されていたコラム集。

ずっとコラムとエッセイの区別がつかないでいたのだが、
この本を読んで、今の世相やその時々の旬のネタを扱って、
書き手の思いやこだわりを綴るのがきっとコラムなのだろうと感じた。
というのも、悲しいかな10年以上前に書かれたコラムを読んでも
もはやピンとこないことが多かったからだ。

例えば、のっけから、イラクの人質事件は解決した といわれてもである。
その当時に話題になって、連日のようにTVのワイドショーで取り上げられた話なのに、
今となってはうっすらとしか覚えていない。
なかには全く記憶から消えてしまっているネタもあった。
もの忘れがひどいと言えばそれまでだ。残念ながらやむを得ない。

なので、「コラム」というものは、
連載されているその時にその掲載誌上で読んだ方が
きっと臨場感もあって面白いに違いないのであろう。

それでも当時往年のネタで書かれたものが、
今にも通じる地下茎のような話もある。
年金問題に対するマスコミの姿勢について
低年齢化する傷害事件と死について
靖国と明治維新と中国についてなど。
それと、一歩引いた視点で事件を捉えていて
当時はどうしてこういう見方ができなかったのだろうと
懐かしくも感じたのは、納豆ダイエット問題 の話。

当時の流行の誌上では、怒涛のようなニュースや記事や
それこそTV映像の中で、右から左に読み流されてしまうコラムでも
こうやって当時の記憶を掘り起こしながら読み直してみると
今更ではあるが膝を打つような感心や
深く得心がいったような感慨に没することがある。
もちろん、そんな単純なことはなかろうという話もあり、
それはそれで今の時勢を見る頭の体操にもなる。

今回は10年以上の時間をおいて読んだことになったが、
書かれたコラムが10年前のものというよりも、
読む自分の脳みそを10年ほど熟成させてから読んだということで
当時だったら感じとれなかったような旨味や
隠し味を感じとることができるのだとしておこう。

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人声天語
坪内祐三
文藝春秋 2009年


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