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2017年5月5日金曜日

読了メモ「若き日の山」 串田孫一



読了。

文章の好きな作家の一人。
今まで何冊か読んできているけれど
風景描写がとても綺麗でいて、読む人の脳裏に沁みていき、
そして、時折、その心を強く打つ。

自分は、GWの渋滞並みの富士山頂登山をしたくらいで、
山岳の経験はないし、山での感慨の思いを実感したことがない。
それでも、この人の文章を読んでいると
遥かなる山と自然、繁る木々や囀る鳥たち、
山小屋に通じる小径のようなものまでが
目の前にすうっとあらわれてきて、
それが人生の捉え方や平和への思いだったりを
指し示すような流れで頭のなかに入ってくる。

もう一つ、親として息子への思いを綴るくだりがある。
息子が一人の女性を山小屋に連れてくる。
本書の中ではこの部分がとてもいい。
そう感じるのは、自分にも息子があるからかもしれないけれど、
著者の親としての純粋な気持ちだったり、
自分の人生を振り返って自問自答している心の声が、
山小屋で囲炉裏を挟んで聞こえてくるよう。

山岳文学というと、厳しい極寒の冬山で生死の境をさまよったり、
危険な場所をつたい歩くようなイメージを持ちがちだけれど本書は全く違う。
社会に生きる人として、親として、
そして平和を願う市民としての思いが山の自然と一緒に描かれている。
山の中に生きるとこういう感性が磨かれるのだろうかと思うほど。

この人の作品はこれからも読んでいきたいと思う。

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若き日の山
串田孫一
山と渓谷社 2001年




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