読了。
今、まさに、渦中の香港だが、
タイトルにやや微妙な感じを覚える。
逆を言えば、苔が生えている国が他にあるということか。
本書を読めばそれはどこかわかる。そこは「さざれ石」のある国だ。
本書は香港が中国に返還された1997年7月1日を挟んで二年間、
現地で市民と一緒のレベルで生活をした
女性ノンフィクションライターによるルポである。
自分自身、返還前に仕事で香港を訪れたことがあったり、
香港返還のレポート作成をしたりと何かと関わりがあったが
やはり本当の香港の姿は見ていなかったんだなと痛感する。
本書に記されているのは、香港人の凄まじいまでの自由さと合理性であり、
自分が見聞したことは美味しいスープの上澄みの部分だけで
大陸からの移民と、人脈・友人関係からなる互助の世界、
なんとしてでも香港社会で生き延びていこうとする市民の生活力が実に逞しい。
著者が住んだ部屋の様子などみると
よく女性一人で生活ができたものだと感心を通り越して驚愕にすら値する。
本書の中で、香港人は、そもそも五十年間も不変でいられるはずはないと言い切っていた。
今の中国からの圧力のことを予知していたとも言えるし、
そもそも香港は常に変化して生き延びて発展してきたバイタリティ溢れる土地だからだ。
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