読了。
最後に著者の作品を読んだのが2017年だったので
久しぶりの いしいしんじワールドだった。
もちろん、積読にはまだ何冊もあるけど。
今回は、全て香川、徳島、愛媛、高知の「四国」が舞台になっていて
「塩」、「峠」、「道」、「渦」、「藍」という
五つのタイトルのお話が詰まっている。
ところが、全編に渡って、なんと言ったらよいのか、
時空を超えたような闇の世界が一筋走っている。
四国というと、以前、邦画で「死国」という映画があったり
本書にも出てくるお遍路さんの話があったりで、
なかなか霊感の強い土地柄というイメージを持っている。
四国出身の方々には大変申し訳ないけれど。
一方で、豊かな自然と透明度の高い河川がながれていたりと
それも合わせて、本州などにはない独特な雰囲気のあるところだと思う。
主人公と離れた魂というのか
別の違う視点でみている視野、もう一つの世界観が語られていて、
よく言えば、ファンタジー、
いじわるな言い方をすれば、ダークサイドストーリーとでも言おうか。
最後まで読んで感じてきたのは、
著者が何か模索をしているのではないのかということ。
五つの短編小説の内容云々というよりも、
著者が苦しんでいる感じがしていてしょうがない。
物語を描きながら、もう一つ別の世界を探し求めている。
それが、話に暗い影のある情景を描いたり
ありえない事象を目の前で起こさせたりしている。
なので、読む人によっては、途中で嫌になってしまうかもしれない。
自分はなんとか最後まで読むことができたが、
読み切ったというさっぱりとした読後感はない。
敢えて、もやもやしたい人は、チャレンジされていはいかがだろうか。
決して、ホラーではない。
でも、著者が何か悩んで探し続けている様を感じる
そんな稀有なお話が集まっている。
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四とそれ以上の国
いしいしんじ
文藝春秋 2008年
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