読了。
久しぶりに小説のダブルヘッダーをしました。
久しぶりに小説のダブルヘッダーをしました。
小説での一気読みは、夏目漱石の三部作以来かな。
一つは「博士の愛した数式」
これは第一回「本屋大賞」を受賞したので
読まれた方も多いのではないでしょうか。
家政婦とその子どもが記憶障害を持つ数学博士に接する姿勢や気持ちが
すごく優しくて寄り添っていて、単なる愛情とか親切さとは
またちょっと違う他者に対する温もりを感じさせてくれます。
博士は、昔のことは覚えていても、
今のことは八時間しか記憶を維持できません。
大切なことはメモにしてジャケットにピンで止めておくのです。
それほどの障害を持っているにも関わらず
数学に関してはピカイチで何でも数学や数値に置き換えて
納得し、感激してしまいます。
読んでる自分も初めて知る数学の考え方などもありました。
そのうち、家政婦や子どもも数学を一緒に考えるようになったり
子どものあだ名は、頭の形からルートにまでなってしまったり。
ルートも博士も阪神タイガースのファンですが、
博士の記憶は江夏の時代で止まっている。
そんな三人で阪神戦を観に行ったりして過ごす雰囲気が
とてもよいのです。
もう一つは「ことり」
こちらは、前作と比べるとやや寂しい孤独感に苛まれるかもしれません。
幼稚園の小鳥小屋をボランティアで世話をしている小父さん。
小父さんにはお兄さんがいるのですが、言葉が不自由です。
お兄さんはポーポー語という不思議な言葉でしか話せませんが、
同じく小鳥を愛してやみません。
薬局で売っている飴玉の小鳥模様の包み紙でブローチを作ったりします。
ストーリーの冒頭は、小父さんが孤独死で発見され、
抱えていた鳥籠にいたメジロが飛び立つシーンから始まり、
回想録のような形で話が進んでいきます。
幼稚園の子どもたちからは、小鳥の小父さんと慕われ
園長先生もよくしてくれて、鳥小屋の世話をするのが
とても楽しくて、小鳥が大好きな小父さんの
優しくて細やかな心が伝わってきます。
自分の家の庭にも餌台を作っては、
やってくる小鳥たちを、お兄さんと一緒に愛でているのですが、
台風の被害で庭にあった亡父の離れの書斎が崩れ落ちたり、
幼稚園の鳥小屋は難を免れましけれど、
新しい園長先生は、そもそも小鳥が好きではなく、
小父さんのことをよく思わなかったり、
子どもを狙った不審者の存在によって、
町の人からも陰口を言われたりと、
後半は読んでいて辛いところもありました。
この二作の登場人物たちは不思議と名前がわかりません。
せいぜい、家政婦の子どもにつけられたあだ名のルートくらいでしょうか。
あえて登場人物に固有名詞をつけないことによって、
空想世界の広がりを醸し出しているのか、なかなか面白い手法だなと思います。
また、どちらも脳神経に障害を持った人物が出てくるのも特徴です。
でも彼らは決して暗い人物の印象ではないし、
むしろしっかりと自分の世界観を持っていて
コミュニケーションに不自由はありながらも、
同居人や友人たちと心を通い合わせながら生きています。
寂しさもあるけれどやさしさと温かみのある二つの小説。
まだでしたら、貴方もいかがでしょうか。
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博士の愛した数式
小川洋子
新潮社 2006年
ことり
小川洋子
朝日新聞出版 2016年
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