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2020年12月15日火曜日

読了メモ「これはペンです」円城 塔





読了。

タイトルになっている「これはペンです」と
「良い夜を持っている」の二篇からなる。

う〜ん。。。。両方ともなかなか手強い話だった。

最初の話は「叔父」、次の話は「父親」が
鍵を握っている人物なんだけれど、
どうも、自分にはこの人物が実在していたとは思えない。
主人公の「わたし」の空想世界で作りあげられたのではないかと。

本書はサスペンスやスリラーではないのです。
ある書店員さんによると、著者の描く小説を
”実験小説”と称していました。

そう言われてみれば、SFでもないし、
かと言って、話の流れと時間軸がずれていたり、
そもそも、最初の話の冒頭が
「叔父は文字だ。文字通り。」
で始まる。
もうこの段階で、自分の頭は半分狂乱していた。
その叔父からメールが来たり、肉筆の手紙でのやりとりがある。

当事者の二人同志は必死に言葉を交わしている。
主人公であるわたしが、生身の言葉で返事しているのに、
一方からは言葉を自動的に生成する装置からの返事とかで
その象徴として、表紙にもあるタイプボールが登場したりする。
ふたつ目の話では、現実のやりとりなんだか、
夢なんだか、記憶を辿っている話なんだかが混乱してくる。
母親と巡り合った経緯とか、磁石に砂鉄が着いた時は
本当かどうか知らないが、磁石をフライパンで焼けば良いとか。
しかしながら、よく読めば一つ一つの話の筋は通っているのだ。
撹乱されてはいけない。

頭の硬くなっている小生には
かえすがえすも難解なお話であった。
こういう話をさらっと読んで、
ふむふむと読後感にひたれるようになりたいものだ。

ちなみに、「これはペンです」は芥川賞候補作でもある。

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これはペンです
円城 塔
新潮社 2011年



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