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2020年12月7日月曜日

読了メモ「上林 暁 傑作小説集 星を撒いた街」山本善行 撰





読了。

ずいぶんと前に購入し、ずっと積読になっていた本だった。

私小説というのはこういう作品をいうのだろうか。
解説にもそう書いてあったし、
帯にも 30年後も読み返したい美しい私小説 とある。

中身は七つの短編からなっていて、
庭に生えていた月見草の話、
田山花袋や島崎藤村と交流があり、目の前の通りを歩く歌人のお爺さんの話
文学全集の販売に全力をあげる若い書店員の話
長患いの妻との話
など。

それぞれの話は、淡々と書かれていて、
文章に無理がなく、すーっと頭の中に入っていく。
帯に書かれていた通り、美しい文章なのだ。
それに、登場人物の動きや所作に
無駄がないように読めるのが不思議だ。

本書のタイトルにもなっている
「星を撒いた街」はその最たるもの。
ややネタバレになってしまうが、
眼下に広がる星々の瞬きがとても綺麗に書かれている。
その星の下で営まれている貧しい人たちの生活。
帰り道のひんやりと冷めた空気が伝わってくる。


30年後には、もう自分はヨボヨボの爺さんであろうが
その頃に本棚から取り出して
静かに読み返したい一冊である。

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上林 暁 傑作小説集 星を撒いた街
上林 暁 著、山本善行 撰
夏葉社 2012年



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