読了。
高橋源一郎さんの文学評論です。
雑誌「文學界」に二年間ほど連載されたものです。
今回の特徴は「全文引用」です。
そんなことしたら、ページがいくつあっても足らんがな。
ですが、まぁそれは大人の冗談として、
でも、長い「引用」が随所になされているのは確かです。
小説は、特に冒頭、プロローグの部分。
源一郎さんは、この冒頭部分で
どんな小説か、察することができるそうです。
読者である我々にもわかると言っているんですけど。。。
源一郎さんは「書く」ことが仕事ですが、
その前に「読む」という作業がある。
読む「言葉」が同じだからこそ意味が通じるので
そうでなかったら話にならない。
しかし、必ずしもそうではないことに、
ある日、突然気がつくのだそうです。
つまり読むことと、その意味を理解することは別物であると。
ん〜ん、これわかります?
どこか別の本でも似た話があったのを記憶してるけれど。
そして、その読みを起点にして、
自分は外の世界へ旅立とうとするのだそうです。
また、文章には一定の速度があり、考える時にも速度がある
それはなぜか。という問い。
これに対しては、文章をカメラにたとえて
カメラと同じ速度で動いているからではないかと
これを三島由紀夫や志賀直哉、島崎藤村などの文章を
引用しながら解説してくれるのですが
まさに目から鱗の感覚でした。
その他にも、詩と小説の違いや
主体性について宗教的観点からの検証、
オタクの誕生、ポルノグラフィーと規則、
靖国の映画撮影時にカメラをくるっと反転させたら喋る人がいるか、
最後は、家族を解散することってできるのか。
「さよなら、ニッポン」というタイトルは
この家族解散の世相の話から浮き上がってきています。
いろいろなテーマでたくさんの作家の文章が
引用されています。
もちろん最後には引用文献リストもあります。
なかなか、読み応えありますよ。全537ページでした。
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さよなら、ニッポン ニッポンの小説2
高橋源一郎
文藝春秋 2011年
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