2021年1月23日土曜日

読了メモ「スプートニクの恋人」村上春樹



読了。

ご存知、村上さんの長編です。
読まれた方も多いのではないでしょうか。

ラブストーリーであはあるんだけど、
だんだんとミステリー感も増してくるし
文章そのものも綺麗な印象を受けました。
村上さんの中では好きな作品の一つです。

前半は、村上さん独特の浮遊感があるけれど
すみれという果敢な小説家志望の女性の心情や
憧れの女性との出会いが、薄靄にかかったような感覚で進んでいきます。
それでも、ギリシャの場面に入ると
目の前にパ〜っと青空が開けて物語が展開していきます。
空と建物のコントラスト感といったら素敵すぎます。

ただ、そのあとで、この人物に
大きな異変が訪れます。
向こう側とこちら側。
決して死の暗喩ではないと思うのだけれど
愛され慕われつつも行方不明になってしまう
相手のことが思い浮かばずにはいられません。

スイスの観覧車のシーンで、その女性が
ペーパーバックを読み始めるけれど
状況が状況だけに、読んでも中身が全く
頭に入ってこないというところがあります。
自分なんかも、自宅で本を読んでいても
頭の中は全く別のことを考えている時があって
いつの間にか、ページだけ進んでいる
ということがままあります。
読書は集中力を必要とすることだなと
常々思うところであります。


また、後半では、いきなり超リアルな世界に引き戻されます。
主人公でもある「ぼく」は小学校の先生なのですが
生徒や生徒のお母さん、警備員と交わされるやりとりは
これまでの女性二人との物語とは正反対の世界。

そんなことがあって、行方不明の彼女との連絡が最後に取れるのですが、
そこには、全く別の時間を過ごしてきた彼女がいて
会話をしているようで、会話は成立していない。
おそらく、二度と会うことはないのでしょう。

時間というものは、それぞれの人間や
世界のあらゆるところで、全く違う過ぎ方をしているんだな
ということを思わせる作品でした。


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スプートニクの恋人
村上春樹
講談社 1999年








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