2022年1月28日金曜日

読了本 2021年


1月も末の今さらではございますが
2021年に読了しました本を一覧に、
また、ブログに貼り付けた表紙の写真を
スライドショーにしました。

お気づきの方もいらっしゃると思いますが
先日アップした「逃亡者」が、2021年の最後に読了した本なのでした。
なんか、ブログを書く筆が遅くなってしまったと反省しきりです。

2022年も昨年以上に読み進めてまいりたいと思います

では、どぞ。



さよなら、ニッポン
高橋源一郎
読了日:2021年1月2日

エジソン ネズミの海底大冒険
トーベン・クールマン
読了日:2021年1月4日

パイドロス
プラトン
読了日:2021年1月4日

スプートニクの恋人
村上春樹
読了日:2021年1月13日

大人のための残酷童話
倉橋由美子
読了日:2021年1月20日

会社の人事 中桐雅夫詩集
中桐雅夫
読了日:2021年1月20日

随想―2011
日本経済新聞社編
読了日:2021年1月27日

キャラ立ち民俗学
みうらじゅん
読了日:2021年1月30日

開口閉口(1)
開高健
読了日:2021年2月5日

“私”はなぜカウンセリングを受けたのか 「いい人、やめた!」母と娘の挑戦
東ちづる
読了日:2021年2月11日

坊っちゃん
夏目漱石
読了日:2021年2月15日

上を向いて話そう
桝井論平
読了日:2021年2月21日

隠された悲鳴
ユニティ・ダウ
読了日:2021年2月24日

死体の解釈学 埋葬に脅える都市空間
原 克
読了日:2021年3月1日

種の起源(上)
チャールズ・ダーウィン
読了日:2021年3月14日

種の起源(下)
チャールズ・ダーウィン
読了日:2021年3月14日

ステラと未来
種田陽平
読了日:2021年3月17日

洋食屋から歩いて5分
片岡義男
読了日:2021年3月22日

水の巡礼
田口ランディ
読了日:2021年3月30日

金田一耕助探偵小説選(第5)本陣殺人事件
横溝正史
読了日:2021年4月1日

ドグラ・マグラ
夢野久作
読了日:2021年4月13日

たんぽぽ娘
ロバート・F・ヤング
読了日:2021年4月24日

天体議会(プラネット・ブルー)
長野まゆみ
読了日:2021年4月29日

知的な距離感
前田知洋
読了日:2021年5月4日

JR上野駅公園口
柳美里
読了日:2021年5月11日

人新世の「資本論」
斎藤幸平
読了日:2021年5月20日

若きウェルテルの悩み
ゲーテ
読了日:2021年5月31日

蚕の城 明治近代産業の核
馬場明子
読了日:2021年6月7日

東京奇譚集
村上春樹
読了日:2021年6月10日

ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか 新美南吉の小さな世界
畑中章宏
読了日:2021年6月15日

ハトはなぜ首を振って歩くのか
藤田祐樹
読了日:2021年6月18日

わたしはこうして執事になった
ロジーナ・ハリソン
読了日:2021年6月27日

スター・ウォーズ ジェダイの哲学 フォースの導きで運命を全うせよ
ジャン=クー・ヤーガ
読了日:2021年7月6日

罪と罰(1)
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
読了日:2021年7月14日

罪と罰(2)
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
読了日:2021年7月19日

罪と罰(3)
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
読了日:2021年7月26日

日本のいちばん長い日 決定版
半藤一利
読了日:2021年8月2日

ダイナソー・ブルース 恐竜絶滅の謎と科学者たちの戦い
尾上哲治
読了日:2021年8月8日

リトル・ピープル:ピクシー、ブラウニー、精霊たちとその他の妖精
ポール・ジョンソン
読了日:2021年8月9日

ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた
青山 通
読了日:2021年8月10日

あひる
今村夏子
読了日:2021年8月11日

夢先案内猫
レオノール・フィニ
読了日:2021年8月13日

変身
フランツ・カフカ
読了日:2021年8月15日

利己的な遺伝子 40周年記念版
リチャード・ドーキンス
読了日:2021年8月26日

人形の家
イプセン
読了日:2021年8月27日

フランケンシュタイン
メアリー・シェリー
読了日:2021年8月31日

批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義
廣野由美子
読了日:2021年9月3日

希望が死んだ夜に
天祢 涼
読了日:2021年9月5日

僕のトルネード戦記
野茂英雄
読了日:2021年9月8日

縦横無尽の文章レッスン
村田喜代子
読了日:2021年9月9日

妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方
暦本純一
読了日:2021年9月17日

すべて真夜中の恋人たち
川上未映子
読了日:2021年9月21日

国家(上)
プラトン
読了日:2021年9月28日

国家(下)
プラトン
読了日:2021年10月6日

海と毒薬
遠藤周作
読了日:2021年10月11日

文鳥・夢十夜
夏目漱石
読了日:2021年10月25日

漱石文明論集
夏目漱石
読了日:2021年11月4日

「原因」と「結果」の法則
ジェームズ・アレン
読了日:2021年11月14日

カラスの親指
道尾秀介
読了日:2021年11月19日

図鑑少年
大竹昭子
読了日:2021年11月23日

堕落論
坂口安吾
読了日:2021年12月4日

逃亡者
中村文則
読了日:2021年12月30日

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2022年1月26日水曜日

読了メモ「逃亡者」中村文則




読了。

非常に情報量が多く、時間軸も前後に揺さぶられる、
密度の濃く難しい小説だった。
話の中心となるのは、太平洋戦争中に
日本の軍楽隊で使われ、”神の楽器”と言わしめたトランペット。
そして、そのトランペット吹きの鈴木という軍楽兵士。
このトランペットをジャーナリストの主人公が手にするのだが、
話はトランペットの経緯にとどまらない。

幕末の隠れキリシタン弾圧による市民への圧制。
広島、長崎の原爆投下、特に長崎の浦上天主堂と
そこのマリア像を隠すアメリカ。
日本の降伏を決定づけたのはその原爆ではなく
ソ連が満州に進駐したこと。
フィリピンでの日本人慰安婦が紙屑同然の軍票を抱えて
川の中で溺れ沈んでいく姿。
ベトナムで出会う愛する女性が、
ヘイトスピーチのデモの中で不慮の事故で死亡。
そのベトナムも終戦後は再び、フランスの進駐を受け
再び戦火が広がる事態に陥る。

いずれも罪のない市民が尊い犠牲を強いられる話がつながっていく。
トランペット吹きの鈴木兵士の手記があり、これも心が痛む。
戦場の兵士を鼓舞するための演奏、
天皇陛下を崇めるための演奏、
現地の住民を慰めるための楽曲も演奏するという。
時には銃弾が飛び交う中でも吹いたという。

もともとは、このトランペットの所有権を巡って、
鈴木兵士の遺族が名乗り出るところから話が
始まっていくのだが、最後は寂しい病室で話は結末を迎える。

途中にあった、下記に大衆市民についてのくだりが心に刺さる。

 君達は、このまま敗北し続けていくだろう。
 人権や多様性と言いながら、敗北していくだろう。
 黒人達のために立ち上がった、キング牧師の言葉を知ってるだろう?
 『最大の悲劇は、悪人達の圧制や残酷さではなく、
  善人達の沈黙である』・・・・・
 君たちは善人達の沈黙に負けるだろう。
 〜中略〜 大衆を愛することができるか?」(p450)

日本とは何だろう? という問いが頭の中を巡る。
設定が複雑なので、好みの分かれる小説ですが
ご興味のある方はぜひ。

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逃亡者
中村文則
幻冬舎 2020年



2022年1月21日金曜日

読了メモ「堕落論」坂口安吾




読了。

昔、読みかけて放っておいた記憶がある。
是非とも読んでおきたいと思っていた。

角川文庫の本書は、堕落論の他に12の論文が収録されている。
論文というより、エッセイと解説されている。

堕落論は、太平洋戦争が終わって、
世間の風潮が大きく変わっていく様を追っていく。
まずは、天皇崇拝、靖国崇拝に対する持論の展開と
一方で、他の事柄については馬鹿げたことをやっていて
それに全く気づかない日本人の愚かさを嘆いている。
終戦直後の日本人は虚脱し放心しているとアメリカ人は言ったそうだが、
本論には、世情がはっきりと語られている。

 笑っているのは、常に十五六、十六七の娘達であった。
 彼女達の笑顔は爽やかだった。〜中略〜
 この年頃の娘達は未来の夢でいっぱいで
 現実などは苦にならないのであろうか。(p115)

終戦後の日本人の精神の変化を、
忠臣蔵の四十七士や武士道を批判的に引き合いに出しながら
論じているのは、痛快でもある。
そして、人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要と説き、
それによって、自分自身を発見し、救わなければならないという。
政治による救いなどは上皮だけの愚にもつかない物だと。

これに続く、続堕落論でも
戦中の耐乏、忍苦の精神を否定し
 
 義理人情というニセの着物をぬぎさり、
 赤裸々な心になろう、
 この赤裸々な姿を突きとめ見つめることが
 先ず人間の復活の第一条件だ。(p126)

当時ばかりでなく、今でも通ずる筋を感じてしまう。

こんな話以外にも、太宰治の自殺を扱うマスコミを
手に取る話など、なかなかに面白い話がもりだくさんである。
文化論、文学論、青春論、悪妻論などいろいろ楽しめる。

タイトルに惑わされずに、一読をお勧めしたい。

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堕落論
坂口安吾
KADOKAWA 2016年



2022年1月13日木曜日

読了メモ「図鑑少年」大竹昭子




読了。

二十四篇からなるショートストーリー&エッセイ集。
どれも、都市や街並み、近所の住人や
すれ違う人たちとの出会いや交流を描いている。

のだけれど、どれも切なく寂しくて、儚いイメージを抱くお話ばかり。
本書の途中途中に挟み込まれているモノクロの写真をみると
よけいにそんな気が増してきてしまう。

タイトルにもなっている「図鑑少年」というお話は、
館外貸出のできない図書館で調べ物をしていて
鉛筆同士がコツンとぶつかり合った音から思い出した子どもの頃の話。
小学生の頃、ツジ君という男の子がいて
その子の家に遊びに行ったことがあった。
洋間で待たされていると、植物、動物、昆虫、魚、鉄道、星座。。。
膨大な図鑑を自慢げに持ってきて見せてくれた。
仲の良い友だちだったが、いつのまにか疎遠となる。
二十年以上経った時、ツジ君が心臓発作で他界したことを知る。
焼香に行き、ツジ君の遺影を見るが
子どもの頃の顔をなかなか思い出せない。
洋間を見渡すと見覚えのある箱があり
中には短い鉛筆が入っていた。
箱を振った時の音が、
小さな骨のぶつかり合う音に聞こえてしかたがなかった。

こんなお話でした。

他には、どこにもない「五十円公園」を探す話や
カラスが多くて、放たれたミドリガメがいる池のある公園近くの自宅で、
門の柵につかまり立ちする飼いウサギを色々な人間が愛ていく「散歩者」。
などなど。

不思議でミステリアスな話が多かったけれど、
読んでいると、変に落ち着く感じのするお話ばかりでした。

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図鑑少年
大竹昭子
小学館 1999年

※下記は文庫本でのご案内です。


2022年1月10日月曜日

読了メモ「カラスの親指」道尾秀介




読了。

ミステリー小説であります。
最近、積読の中にミステリーやSF系が増えてきて
いわゆるエンタメ小説もこれから読もうかなと
いつだったか書いた記憶が。。。

主人公は詐欺師のオヤヂ二人組。
それにスリの姉妹とその彼氏が絡んできます。
ヤミ金相手に、しかけていくんですが、
これがね、全部が全部伏線なんですよね。
最後の最後で、えっ、そうなの?!って。
すべてが繋がって、目の前が開ける感じがします。
見事に騙されましたw

読後感もすっきりだし、ミステリーとはいいつつ
途中の文章も軽快でありつつ、緻密に組まれているし。
やったじゃんと思った次のどんでん返し。
ちょっとホロっときちゃう結末もいいですよ。

あらすじ書くのは野暮なので
内容は是非、読んでお確かめください。

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カラスの親指
道尾秀介
講談社 2009年

※下記は文庫本でのご案内です。


2022年1月5日水曜日

読了メモ「『原因』と『結果』の法則」ジェームズ・アレン




読了。

2022年最初の読了メモは、自己啓発書です。
自分はあまり自己啓発書は読まない方なのですが
以前、ある先生に勧められて手元においていたものです。
原題は、"AS A MAN THINKETH" です。

本書は1902年に書かれたもので、
一世紀以上にわたるロングセラーの自己啓発本だそうです。
聖書につぐベストセラーとも。本当かな。

読んでいくとわかるのですが、
自信に満ち溢れた書き方で、
人間はこうだ!という言い回しで、ものすごい勢いで迫ってきます。
まぁ、そうじゃないと啓発本なんて書けないですよね。

 私たち人間は、私たちを存在させている法則でもある
 「原因と結果の法則」にしたがい、つねにいるべき場所にいます。
  〜中略〜 
 よって、人生には、偶然という要素はまったく存在しません。
 私たちの人生を構成しているあらゆる要素が、
 けっして誤ることを知らない法則が正確に機能した結果なのです。
 環境に不満を感じていようと、満足していようと、同じことです。(p22)

偶然を真っ向から全否定しているのが本書の肝で、
ここまで断定されてしまうと怖いくらいで
なんか身動きまでとれないような気にもなってしまいます。

後半は、人生の目標に向かう勢いが増していきます。

 人間を目標に向かわせるパワーは、
 「自分はそれを達成できる」
 という信念から生まれます。
 疑いや恐れは、
 その信念にとって最大の敵です。(p52)

もうここまでくると暗示にかかるしかありません。

その他にも、大きな目標が発見できない人は、
目の前にある やるべきことに集中すれば
自己コントロール能力が磨かれるとか、
大きな達成を手にしたとたんに警戒を怠ると落伍者に陥るとか、
次々とたたみかけてきます。

そして最後には、理想を抱くこと、ビジョンをしっかり胸に抱き、
心穏やかにいることが大切だと結んでいます。

ページ数は100頁にも満たない本書です。
熱い問いかけには勇気をもらえます。

新年の一冊目にいかがでしょうか。

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「原因」と「結果」の法則
ジェームズ・アレン 坂本貢一訳
サンマーク出版 2003年