読了。
昔、読みかけて放っておいた記憶がある。
昔、読みかけて放っておいた記憶がある。
是非とも読んでおきたいと思っていた。
角川文庫の本書は、堕落論の他に12の論文が収録されている。
論文というより、エッセイと解説されている。
堕落論は、太平洋戦争が終わって、
世間の風潮が大きく変わっていく様を追っていく。
まずは、天皇崇拝、靖国崇拝に対する持論の展開と
一方で、他の事柄については馬鹿げたことをやっていて
それに全く気づかない日本人の愚かさを嘆いている。
終戦直後の日本人は虚脱し放心しているとアメリカ人は言ったそうだが、
本論には、世情がはっきりと語られている。
笑っているのは、常に十五六、十六七の娘達であった。
彼女達の笑顔は爽やかだった。〜中略〜
この年頃の娘達は未来の夢でいっぱいで
現実などは苦にならないのであろうか。(p115)
終戦後の日本人の精神の変化を、
忠臣蔵の四十七士や武士道を批判的に引き合いに出しながら
論じているのは、痛快でもある。
そして、人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要と説き、
それによって、自分自身を発見し、救わなければならないという。
政治による救いなどは上皮だけの愚にもつかない物だと。
これに続く、続堕落論でも
戦中の耐乏、忍苦の精神を否定し
義理人情というニセの着物をぬぎさり、
赤裸々な心になろう、
この赤裸々な姿を突きとめ見つめることが
先ず人間の復活の第一条件だ。(p126)
当時ばかりでなく、今でも通ずる筋を感じてしまう。
こんな話以外にも、太宰治の自殺を扱うマスコミを
手に取る話など、なかなかに面白い話がもりだくさんである。
文化論、文学論、青春論、悪妻論などいろいろ楽しめる。
タイトルに惑わされずに、一読をお勧めしたい。
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堕落論
坂口安吾
KADOKAWA 2016年
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