2016年2月20日土曜日

読了メモ「落語家論」柳家小三治



読了。

落語論ではない。落語家論である。
といっても、落語家たるものこうあるべし
のようなことも書いてはあるが、
おおかたはいずれのことにも相通じる話が多い。

特に前半は、「紅顔の噺家諸君!」として、
若い噺家に向けて書かれたメッセージで

 師匠なんてのは弟子を育てるなんてのはできないぜ。
 キミは、そのうち誰かが助けてくれると思っていないか?
 自分はどういうやり方で噺家という一生を過ごしていくのかを考えた方がいいと思う。

など、噺家の世界に身を置いていなくても
とっくに紅顔でなくなっていても、身の引き締まる話がでてくる。

また、噺家という生業への誇りを感じ、
聞いてくださるお客様のことを考える話として
「機内放送の落語」は、ごもっともとしか言いようがない。
最近の機内放送の設備がどうなっているのか
ここんところ飛行機に乗っていないのでわかりませんが。。。


他にも、協会の変遷や名人会など落語界ならではの話題ばかりでなく
著者自身の趣味のバイクツーリングやボーリング、
塩にこだわっていることや芸能界を鼻濁音で切ってみたりと
話題が多岐にわたっていて、ありがちなタコツボ感がないのもいい。



落語の本は数年前に古今亭志ん朝のを読んだことがあった。
その時も今回もそうだが、活字にリズムがあって
トントントンと読み進めることができる。
江戸っ子の話言葉だからなのだろうがそれにしても面白い。

そんな言い回しで、こんな話を読むとしみじみもするし
わくわくもしてしまう。

 自分に何歳までの天寿があるか知らないが、マラソンで言えば、
 折り返し点をもう過ぎてしまったことはどうやら間違いではないらしい。

 年をとるということは、予想に反して、実に面白いものであるようだ。
 これから先も、少しづつ年をとっていく。楽しみで楽しみでしょうがない。

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落語家論
柳家小三治
筑摩書房 2009年
 
 

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