2016年6月4日土曜日

読了メモ「僕の虹、君の星 ときめきと切なさのの21の物語」ハービー・山口



読了。

写真家である著者のフォトエッセイ。

物語はたっぷり。
むしろ読み応えがあると言った方がいいくらいで
その上、挟み込まれているモノクロの写真がどれも素敵なんです。
著者のモットーである
人の希望を撮る。
人が人を好きになる様な写真を撮る。
人の心を清くする写真を撮る。
が、見ていて伝わってくるのです。

ロンドンやパリなど海外での生活や仕事で、
孤独に打ちひしがれている時に、
周囲の人がもらした自分への一言が、
自分の生まれながらに持っている個性と誇りに自信を持たせ
それに磨きをかけることが人生だ教えてくれた
と言えることがなんとも素晴らしいです。

また、そんな著者を支えてくれたのが
日本に帰ってこいと一言も言わない両親。
思い切り気の済むまで住み続ければよいと、
大きな期待ではなく、信用してくれていると
子が感じることのできる親子の関係に胸を打たれます。

そんな著者は、中学生の頃、病気を苦に登校拒否に陥りました。
進級もままならないギリギリの状況。
その時、著者を救ってくれたのが写真です。
あの時の辛い思いが、人を優しくする写真を撮りたいという気持ちに駆り立てる。
ハンディキャップと思ってたことが、転じて自分の味方になってくれる。
自分の個性を磨くことは人生の螺旋階段で、決して諦めてはいけない。
自分と語れる多くの友がいて、自分をもっと生かせるまだ見ぬ場所が
必ずどこかにあると信じてというのは大変重みのあるメッセージです。

福山雅治や山崎まさよし、U2などのアーティストの
写真を撮る話もあります。そこで交わされる被写体との会話が
緊張感もあるけれど、信頼をお互いに寄せ合い
いい仕事をしている大人同士の空気を読む事もできます。


最後に、詩が寄せられています。
このエッセイを総括するような詩です。これがまたいいです。
噛み締めて噛み締めて何度も読み直したくなる詩です。

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僕の虹、君の星 ときめきと切なさのの21の物語
ハービー・山口
マーブルブックス 2010年


 

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