読了。
だるまちゃんの絵本で有名な著者による語り下ろしの一冊。
ちなみに、著者は1926年生まれで御年91歳。
子どもたちの心を師と仰ぎ、
その純粋で正直な子どもの反応に
著者は真正面からぶつかって応えていきます。
子どもを既成の枠にはめようとする大人はおろかであって、
余計な心配をせずとも、大人はわかってくれないことを
子どもたちはちゃんと理解して考えているのだと。
著者は19歳で敗戦を迎えました。
敗戦後、掌を返して戦争反対を合唱する大人にあきれ、
残りの人生で何ができるのかを真剣に考え、先に亡くなっていった仲間に償い、
子どもたちの将来のために実践していくことを誓うのです。
最初のうちは、お年寄りの戦争にまつわる典型的な話っぽいのですけれど、
そのうち、子どもたちとの絡みがでてくると、
それこそ自分が子どもの頃に感じていたことなんかを
ぽつりぽつりと思い出してしまう話に出会うのです。
あ〜、そういや自分もそう思ってたよ、なんて。
子どもだって感じたり考えたりすることがひとりひとり違うってことを
よく考えれば当たり前のことなのに、
大人になるとそれを忘れてしまうようです。
著者は絵本を書き始める前は、大手企業で技術者をしていましたが
そこでの経験が、世の中の裏を知るよい経験になり、
人間としての修行の場となったと言っていますが、なんとも皮肉なものです。
最後には福島の原発事故についても述べています。
なぜあんなことになったのか、あんな判断しかできなかったのか。
戦争に負けたあの時に、大きな犠牲を払って学んだはずなのに
また同じような過ちを繰り返すことになるのではないかと思っているそうです。
そんな話の合間合間に、絵本にでてきたお話や
だるまちゃんたちの会話が挿入されていたり、
あの有名な挿絵もいくつもまとまってみることもできます。
かみなりちゃんの国にあるものすべてが、
みんなツノの生えた形になっているのがとても懐かしかった。
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未来のだるまちゃんへ
かこさとし
文藝春秋 2014年
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