2017年2月21日火曜日

読了メモ「セックスの哀しみ」バリー・ユアグロー



読了。

90編。こんなに短編ばかりを読んだことがない。
しかも、どれもどこかせつない話ばかり。
本のタイトルの通り、男と女の話ではあるが
恋愛や恋人同士の楽しい話ばかりではない。
どちらかというと、読んでいくにしたがって
だんだんと険しくなっていくようだ。
最後は悟りの境地かもしれない。

通りすがりの人と目を合わせたことで頭をよぎる奇想天外なイメージ。
食卓でのちょっとした一言がとてつもない隕石になって落ちてきたり、
戦場で銃弾の飛び交う中、異性の兵士を瀕死で見上げていたり。
SFチックなショートショートもある。
あれを一人歩きさせてしまうのもぶっ飛んでいる。
なかには、わずか六行で終わる話もあった。

こういう展開の激しい話は、一気に入り込むというか
一話あたりの読む文字数も少ないので、
強引にでもイメージをどんどん膨らませないといけない。
最初のうちは、なかなか馴染めなかったけれど、
途中から、とまらなくなってしまった。
グリグリと彫刻刀で掘り出す感じで読んでいくのだ。
ただ、そうやって読んでも、せつなくて、やりきれなくて、
なかには情けないような読後感になったりする。

それでも、最後の「時計職人の工房で」という話では
自分はホッコリとして読み終えることができた。
僕のガラスのハートにはどんな鳥がいるんだろうとイメージしながら。

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セックスの哀しみ
バリー・ユアグロー 柴田元幸 訳
白水社 2000年





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