読了。
1960年代に、雑誌「ミセス」に連載されていた
著者による人物エッセイ。
後半の対談は、少し年代が下がって70年代、
新しくても81年のもの。
私の人物スケッチ、異色の芸術家たち、私の美男子論
の三つから成るが、ちょうど、自分が生まれた頃の記事だったわけで、
そりゃもう一緒に載っている写真の御仁たちが若く、立川談志なんかのお茶目なポーズも楽しい。
一方で、壮年で当時それなりの地位の方々も登場し
当時を築きあげていたいろいろな顔をみることができる。
三島由紀夫は、2回登場する。
これがまたかっこいい。
手をポケットに突っ込んだジャンパー姿と
あのギョロッとした眼で睨みを利かせた顔のアップ。
二つの記事とも、三島由紀夫のその眼について書かれている。
いつも傍にいて、その眼を観察できる三島夫人を羨ましいと思い、
その炎の眼は、闇の中でも白い光を放つのだという。
数年前に観た篠山紀信の写真展でも三島由紀夫の写真があったが
あの写真も確かすごい眼をしていたことを思い出した。
芸術家たちでは、
多々良純、吉行淳之介、武満徹などに混じって、
たいめい軒創業者の茂出木心護、
爬虫類学者の高田栄一などが登場する。
茂出木心護という名前はタイトルにはなく
文中もすっと屋号の「たいめい軒」で紹介されていて
店内でドンと座って屈託のない笑顔の写真が象徴的。
高田栄一は子どもの頃に、この人の本を読んで
結構はまったことがあったので懐かしかった。
後半の対談では、意外というかやはりというか
時代を先取りするような人生観、結婚観について、
堂々とすでに語られていてとても驚く。
文豪を親に持って育った環境の影響は大きいのでしょうけれど
いやはや、やっぱり世界が違うなぁと思ったのでした。
全ページを通じて、ヨーロッパでも欧州でもなく
「欧羅巴」の雰囲気がむんむん醸し出されてきますし。
私の美男子論に、榎本健一も出てくるのですが
それを読んでか、CDを購入してしまいました。
ノリノリでなかなか良いです。
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私の美男子論
森 茉莉
筑摩書房 1995年