読了。
妻が末期癌であることを告げられる。
余命は、早くて3ヶ月、もって半年。
本人への告知は、たった一人の家族である
夫である著者に任される。
夫は、告知をしないことに決めた。
仕事や研究会で調べ物をしていると
時間の経過を意識せずにすむが、
移動時間、特に乗り物に乗っていると
時間と自分が競争して過ごしているのをひしひしと感じたそうだ。
癌と闘う妻との会話も心を揺さぶられるが、
一人で妻のことを想い、自らの気持ちをつづるところに
もう何ものにもかえられない著者の胸のうちがある。
病魔は、著者にも襲いかかってくるのだが
これをなんとか乗りこえる。
二人きりの家族なのだから、
自分が日常と実務を動かさなくてはいけないと
読んでいて、すごい気力が迫ってくる。
そして、最期まで告知はしない。
でも、妻はそれをすべて赦してくれている。
本書は古書店で手に入れたのだけれど
前の持ち主だったのであろう栞が挟んであった。
それは、赤茶けた紅葉の葉っぱの栞が大小で2枚。
今でももちろん挟んで残してあります。
=================
妻と私
江藤 淳
文藝春秋 1999年
0 件のコメント:
コメントを投稿