2017年4月1日土曜日
読了メモ「カンガルー・ノート」 安部公房
読了。
安部公房の遺作。
脛に生えたかいわれ大根、体を括り付けられたベッドが自走、
賽の河原の小鬼たち、自称ドラキュラの娘という採血自慢の看護婦、
学校のハナコ霊、ピンクフロイドのエコーズ、
オタスケ オタスケ オタスケヨ オネガイダカラ タスケテヨ
読み始めから公房ワールド全開の展開とテンポでついていけるのかと思うも
なぜかどんどんと読み進み深みにはまってしまう。
主人公は会社の新しい製品提案で、
カンガルー・ノートと書いた一行メモを提出するのだが、
それがなぜか通ってしまい、周囲からも大いに期待される。
しかし、体に異変が起きていた。
脛にかいわれ大根が生えてくるのだ。
病院でベッドに括られ、そのベッドが自走して外に出て行く。
読み進めていくうちに気づいたのは、
きっとこの話のテーマは「死」なんだろうと。
こちら側にいながら向こう岸をちらちら覗いているような、
向こうの人と、或いは向こうに行こうとしている人と
会話をしているようなシーンがある。
本作が、著者が死を間近にひかえて遺作となった長編小説であったことは
読み終えた後で知った。
そのことを理解してから読んでいれば
また違った読み方、感じ方ができたと思う。
最後のところで、箱の穴を通して
自分の姿をみているというところは衝撃的であったし、
最後の最後のページの終わり方も肩の荷が降りるというのか
あっさりと通り過ぎていってしまう寂しさが残る。
かいわれ大根が脛に生えて擦れ合い、
その繁茂ぶりと手で撫でた時の根っこのひっぱられ具合が
やけにリアルに感じられてゾワゾワします。
安部公房ワールドにどっぷり浸りたい方はぜひ。
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カンガルー・ノート
安部公房
新潮社 1991年
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