2017年4月23日日曜日

読了メモ「太宰 治の辞書」 北村 薫



読了。

小説だったのですが、
文学評論と思えるほどマニアックな内容。
太宰 治にとどまらず、芥川龍之介、三島由紀夫、萩原朔太郎、
伊藤 整、江藤 淳や谷川俊太郎などの文豪や作家がオンパレードの
文学ミステリーとでも言うものでしょうか。
実は、あの文学芸人も実名で登場したりする。

ただ、自分は円紫師匠と私のこのシリーズを読んだことがなく、
しかも、本書はそのシリーズの最終刊らしい。
また、太宰 治の読み込みもまだまだ浅い身にとっては
なかなか難易度の高い本だった。

謎解きや話の端々に出て来る小道具が面白い。
例えば、太宰 治にちなんだ青森銘菓の「生れて墨ませんべい」
苦悩は満腹感で薄まるものだそうで、バリバリと食べて
太宰 治的苦悩を解決しましょうと袋には書いてあるそうな。
ほかに架空のお菓子として、斜陽せんべい、かじれメロス、
漱石にちなんでは、吾輩はチョコである なんてのも出てくる。
すでに実在するかもしれない。

中盤から後半にかけては、「ロココ」という言葉が鍵となって展開する。
美しさには内容など関係ないということで使われているようなのだが、
派生して、ロマネスコというブロッコリーだかカリフラワーだかの仲間の野菜も登場し、
太宰 治が寄せたロココという言葉の解釈に迫っていく。
そして探索の鉾先は、太宰 治が座右で使っていた「掌中新辞典」という辞書へ。
昭和初期の頃にはロココという言葉はどの国語辞書にも載っていなかったらしく
一部の百科事典に記述はあるもののその解説の度合いにかなり開きがあった。
その辞書を求めて前橋にまで赴くが、はたしてその辞書に「ロココ」は。。。

読み終えた後、本棚にある太宰 治の本を
何冊かひっぱり出したけれど、
本書で取り上げられていた「女生徒」は、やはり読んでいなかった。
次の機会に読んでおこうと思う。

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太宰 治の辞書
北村 薫
新潮社 2015年



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