2018年1月17日水曜日

読了メモ 「ヘッドフォン・ガール」 高橋健太郎



読了。

タイムトラベルという宣伝文句が帯にあって
SF小説なのかなと思っていると、そんなことでもない。
どちらかというと、スピリチュアルな世界観に近いと思う。

行方不明になった叔母の中野の家を探索していたら
タングステン球を使う映写機を見つけた。
それを通じてみる世界は、なぜか、
地下鉄にのったヴァイオリンを持つ少女の視界。

同じ家の中で、ドイツ製の古いマイクも見つける。
こちらは第二次世界大戦時にナチスドイツで使われたものらしい。
すでに他界した祖父の足跡をたどりながら
日本で唯一そのマイクを修理できる人物を京都に探し出す。

その他にも、バンドのメンバーがやはりこの京都の人物とのつながりを
スタジオの中から見つけ出し、実際に会いに行こうとする。

肝心の行方不明の叔母はヨーロッパで交通事故にあっていて
帰国が遅れていただけだったのだが、
いろいろなことが重なり、絡み合って
叔母の家にあるドイツ製ピアノに話が収斂していく。


そして、自分自身もはっきりと覚えているあの事故。
実は自分の母親もあと一本電車を違えていたら
遭遇していたかもしれなかった。

中目黒や祐天寺など身近な地名が出てくるのも
何か巡り合わせ的な不思議な感じがして話に入りやすかった。


著者が音楽家ということもあって
すぐには理解しにくいワーディングもあるけれど
戦争からの長い時間を超えて、現実の事象も交えた
不思議な小説でした。

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ヘッドフォン・ガール
高橋健太郎
アルテスパブリッシング 2016年





2018年1月10日水曜日

読了メモ 「龍馬デザイン。」 柘植伊佐夫



読了。

上下2段で370ページ。
日記調で書かれたドキュメンタリー。
なかなかのヘビー級であった。

2010年に放映された大河ドラマ「龍馬伝」
主演は、福山雅治といえば思い出す人も多いでしょう。

半世紀もの歴史があるNHK大河ドラマの中で、
この龍馬伝で初めて導入されたのが
「人物デザイン監修」という役割。
もともと、ヘアメイクだった著者が抜擢され、
はじめは龍馬だけをみていたがそのうち、
監督や演出、扮装、美術、大道具小道具、時代考証などのスタッフ、
そして数々の俳優そのものと交わり
ドラマに関わる全人物像をデザインするようになっていく。

一般的な映画製作とNHK大河ドラマの製作は全く異なる。
製作期間、リソース、予算、放送協会としての独自のルール、
そしてなんといっても、毎週必ずアウトプットを出して
放映しなければならない。

なかには視聴率についての議論もあったが、
それ以上に厳しい目が大河ドラマを内外から見ており
スタッフのチームワークの微妙な空気感、
コミュニケーションの濃さと速度に敏感に反応していく。


自分は大河ドラマを含めテレビドラマを見なくなってしまって久しい。
この龍馬伝も実は観ておらず、作品をどうこういう資格もない。
けれど、クリエイティビティの発揮とチームワークの極限とも言える実態を
この本を通じて味わうことができてとてもよかったと思っている。
そういう本です。

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龍馬デザイン。
柘植伊佐夫
幻冬社 2010年



2018年1月1日月曜日

2年ぶりの謹賀新年

Mt.Fuji



実は2年ぶりの新年のご挨拶となります。

昨年は、自分の身の上にいろいろなことが起こり
家族にも、仕事の仲間にもいろいろな方々に助けていただきました。
本当にありがとうございました。

今年もこのブログの上で何冊の本をご紹介できるのか
どんなことをお知らせできるのかわかりませんけれども
できることを少しづつでもやっていこうと思います。

本年もよろしくお願いいたします。

※少々霞んでおりますが、写真は今朝の初日の出を浴びた富士山です。


2017年12月31日日曜日

読了2017リスト






2017も残りあとわずか。

今年は、自分に大変大きな事件のあった年でした。
一時は先を見失いかけた時もありました。
にも関わらず、新しい趣味を始め、仕事にも復帰し、
次の年を迎える準備ができているのは
家族をはじめ、仕事の仲間や友人、様々な方々おかげです。
本当にどうもありがとうございました。
みなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。

そんな中、今年は下記の合計五十一冊を読むことができました。
読む冊数の時間も限られてくるであろうこれからは
本ともじっくりと向き合っていきたいと思います。

では、今年読んだ「梶井基次郎小説全集」から、
先日の「朗読の楽しみ」まで。。。。

■梶井基次郎小説全集
著者:梶井基次郎
読了日:01月01日

■鳥人大系
著者:手塚治虫
読了日:01月03日

■犬の人生
著者:マーク・ストランド
読了日:01月07日

■人声天語
著者:坪内祐三
読了日:01月15日

■高倉健 Ken Takakura 1956-2014
著者:高倉健
読了日:01月21日

■センス・オブ・ワンダー
著者:レイチェル・L.カーソン
読了日:01月22日

■あたらしい結婚日記
著者:服部みれい
読了日:01月29日

■沈黙
著者:村上春樹
読了日:02月01日

■未来のだるまちゃんへ
著者:かこさとし
読了日:02月04日

■セックスの哀しみ
著者:バリー・ユアグロー
読了日:02月10日

■言葉の流星群
著者:池澤夏樹
読了日:02月15日

■スロー・イズ・ビューティフル―遅さとしての文化
著者:辻信一
読了日:02月20日

■女子と鉄道
著者:酒井順子
読了日:02月23日

■妻と私
著者:江藤淳
読了日:02月24日

■コーヒーに憑かれた男たち
著者:嶋中労
読了日:03月01日

■東京飄然
著者:町田康
読了日:03月07日

■私の美男子論
著者:森茉莉
読了日:03月12日

■カンガルー・ノート
著者:安部公房
読了日:03月17日

■ナリワイをつくる:人生を盗まれない働き方
著者:伊藤洋志
読了日:03月23日

■月3万円ビジネス 100の実例
著者:藤村靖之
読了日:03月30日

■ぶらんこ乗り
著者:いしいしんじ
読了日:04月07日

■仮面の忍者赤影 (第1巻)
著者:横山光輝
読了日:04月08日

■仮面の忍者赤影 (第2巻)
著者:横山光輝
読了日:04月08日

■仮面の忍者赤影 (第3巻)
著者:横山光輝
読了日:04月08日

■カモメに飛ぶことを教えた猫
著者:ルイス・セプルベダ
読了日:04月14日

■乱歩 夜の夢こそまこと
著者:石塚公昭
読了日:04月15日

■太宰治の辞書
著者:北村薫
読了日:04月23日

■若き日の山
著者:串田孫一
読了日:05月01日

■西表島の巨大なマメと不思議な歌
著者:盛口満
読了日:05月07日

■人生の特別な一瞬
著者:長田弘
読了日:05月13日

■日本でいちばん小さな出版社
著者:佃由美子
読了日:05月20日

■カバに会う―日本全国河馬めぐり
著者:坪内稔典
読了日:05月28日

■私の台所
著者:沢村貞子
読了日:06月16日

■完全版 不安のメカニズム: ストレス・不安・恐怖を克服し
  人生を取り戻すためのセルフヘルプガイド
著者:クレア・ウィークス
読了日:07月11日

■三四郎
著者:夏目漱石
読了日:07月17日

■それから
著者:夏目漱石
読了日:07月20日

■門
著者:夏目漱石
読了日:07月23日

■クラゲの正体
著者:坂田明
読了日:07月27日

■ヒトラー演説 - 熱狂の真実
著者:高田博行
読了日:08月03日

■ソラシド
著者:吉田篤弘
読了日:08月14日

■リヴァイアサン
著者:ポール・オースター
読了日:08月20日

■身体から革命を起こす
著者:甲野善紀
読了日:08月30日

■思い出トランプ
著者:向田邦子
読了日:09月04日

■どうにもとまらない歌謡曲? 七〇年代のジェンダー
著者:舌津智之
読了日:09月11日

■羊をめぐる冒険
著者:村上春樹
読了日:09月18日

■憧れの女の子
著者:朝比奈あすか
読了日:09月30日

■トラブルクッキング
著者:群ようこ
読了日:10月21日

■ラーメンの語られざる歴史
著者:ジョージ・ソルト
読了日:11月09日

■「自由」のすきま
著者:鷲田清一
読了日:11月23日

■月: 人との豊かなかかわりの歴史
著者:ベアント・ブルンナー
読了日:12月09日

■朗読の楽しみ 美しい日本語を体で味わうために
著者:幸田弘子
読了日:12月26日

 

2017年12月29日金曜日

読了メモ 「朗読の楽しみ 美しい日本語を体で味わうために」 幸田弘子




読了。

ちょっと今までとは嗜好の違う感じです。

三途の川を遠くからですがチラ見したかもという
2017年は、自分にとっていまだかつてない年でありました。

そんな身体でも、何かできる楽しみを見つけようと
いきなりですが、朗読を始めてみました。
いつだったたか、恥じらいもせずいいかげんな「雨ニモマケズ」を
アップしたこともありました。

年末にあたって、その朗読についての本を読んで、
ちょっくら頭の中を整理しておこうかな
と思って手にしたしだいです。


ただ、本書の取り上げているジャンルの本腰が
古典なので、ところどころ敷居の高いところがあります。
なにせ、私めは古文が大の苦手なのでありまして。
源氏物語、蜻蛉日記、奥の細道などなど
あり、おり、はべり、いまそかり。。。。
ずっと時代は下って、樋口一葉が話しのメインになるのですが
ここでもちょっと自分にはまだ難しい。


えっと、朗読と音読の違いってご存知でした?
自分はでんでんおんなじだと思ってたのですが違います。
人に聞かせるためなのが朗読なんですね。
聞き手がいるんですよ、朗読の場合は。
なので、物語を読み込むことはもちろん
地の文も含めて、登場人物の気持ちを
聞いている人に伝えないといかんのです。
ただ、演劇ではないので、演出過剰はお呼びではありません。
どちらかというとアコースティックな楽器演奏に近いように思います。

というような感じのことが書かれているおりますが
要は月に一度ですが朗読教室に通っております。はい。

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朗読の楽しみ 美しい日本語を体で味わうために
幸田弘子
光文社 2002年


2017年12月24日日曜日

読了メモ「月 人との豊かなかかわりの歴史」ベアント・ブルンナー



読了。

ギターを教わっている先生が
満月の時にリサイタルをされている。
そういえば、月についての本があったなと引っ張り出してみた。

月はいわずもがな最も地球に近い天体で
古からその存在は様々な形で人間の生活に影響を及ぼしてきた。
暦としてはもちろん、作物の出来不出来を占い、
潮の満ち引き、生物の生殖にも月が関係している。
本書には、月面で耕作する農夫の姿や、巨大な月人、
つむじ風で月に飛ばされてしまう船の絵など
図面も豊富にあって面白い。

一方で、月をはじめとした宇宙開発計画は、
米ソの冷戦が大きな背景にあったこと。
月面での核実験が実際に計画されていたことなど
信じがたい事実もあった。
今でも、人類が月面に降り立ったのは
事実なのかという議論があるそうだ。


読み終えて一番心に残ったのは
月から見る地球の姿を見てみたいという思い。
到底、月に行けるはずもないが
月からみた、青くてところどころ白い雲に覆われた
大きな地球をみてみたいと思ったのでした。


「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが
 全人類にとっては大きな一歩だ」

と言われたアームストロング船長の言葉は
1969年、今から50年近くも前のことなんですね。


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月 人との豊かなかかわりの歴史
ベアント・ブルンナー 山川淳子 訳
白水社 2012年
 



2017年12月10日日曜日

読了メモ 「「自由」のすきま」 鷲田清一



読了。

哲学エッセイ。
装丁のカバー写真は植田正治。

タイトルは「自由」のすきまだけれど、
勝手に解釈すると「自分」のすきま 
と言い換えられるかもしれない。

哲学の本となると、ひねくれや説教じみた話を
連想しがちになるが、はたして本書はそんなことはない。

自分のこと、子供のこと、本のこと、偉いということ
世間を揺るがした大事件やそれを報じるマスコミのこと、
そんなあれこれを、著者流の視点で眺めなおし
新しい気づきを教えてくれる。
ひとことで言えばとてもやさしい。

例えば、「自分らしさ」とはなにか。
自分らしさに気づくとはどういうことなのか。
気づいた後の自分って一体何なのか。
気づいてどうするのか。
堂々巡りかもしれないけれど、
一考の価値のあるテーマだと思います。

後半は、著者の日常生活の一端を語っているパートがあり、
そこに出てくる二匹の柴犬がいい。
それまでのいろいろ考えさせられてきたテーマが
やわらんでいくような安らぎを二匹が教えてくれます。

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「自由」のすきま
鷲田清一
角川学芸出版 2014年