2016年4月5日火曜日
読了メモ「タマや」金井美恵子
読了。
もちろん猫の名前である。白黒のぶちのメス。
生まれたばかりの仔猫が5匹いて、乳をあげているが
その仔猫たちの父親は不明。
主人公の夏之の父親もいまいちはっきりしない。
それどころか、異父の兄と出会い、部屋を同じくすることになるのだけれど、
母親は、その兄弟の父親のことをすぐには思い出せない。
問い詰められてはじめて、ああそうだという。
ちなみに、その異父の兄は精神科医。
失踪中の姉のツネコを探すアレクサンドルという友人もいる。
ポルノヴィデオ男優でカネミツという名前も持っている。
姉のツネコは妊娠しているらしいがやはり父親役は不明。
夏之は、内心、自分ではないかとドキドキしている。
と、こんな人物たちの話がつらつらと続く。
大きな事件が起きるわけでもなく
のんべんだらり的な空気が充満してくる。
ぎすぎすした感じはまったくない。
読んでいて面白いのが、改行がほとんどないこと。
それでいて、会話が多い。
読みにくいかと思うと、不思議なことにそんなこともない。
つるりつるりというか、てれりてれりという感じで文章が進んで行く。
今まで、出会ったことのない日本語感覚。
本書の中で、アマンダ・アンダーソンの写真 というフレーズが
なんども出てくる。それもどうやら、フィクションらしいのだけれど
表紙の写真は、著者のあとがきによれば、
フランス人女優のアンナ・カリーナだそうで
このイメージのような写真を撮るらしく
実在するなら観てみたい。
最近、白と黒をはっきり分別するような、
エッジの効いた話が好まれたり、評価されるような印象を受けているのですが
本書のような小説を読むと、ギリギリギリとそんなに迫る必要って
本当にどこまであるのかって感じがしてきます。
ちなみに、下の文字は何に見えます?
やーらか
これが猫に見えるなら、もうどっぷりです。
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タマや
金井美恵子
講談社 1987年
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