2016年4月26日火曜日

読了メモ「平和通りと名付けられた街を歩いて」目取真 俊



読了。

1980年代に書かれた沖縄を舞台とした短編小説集。

外国産の帰化した魚、台湾からの出稼ぎ女性労働者、
想像妊娠、足のない蜘蛛、街の警備と痴呆老人、
そして、闘牛と知的障害者。
これらのキーワードからなる5つの話。
装丁の表紙からも、どこかダークで、
入っていくのを躊躇うような気が漂ってくる。

話は沖縄であるが、基地や戦争そのもののあからさまな描写はない。
最後の話に米兵がちらっと出てくるくらい。
それでも、本書を読むと戦争の痕や抑え込まれている空気のようなものが
沖縄という風土の中にずっしりと染み込んでいて
人々の生活の奥底に沈殿しているように感じてしまう。

五つのいずれの作品もそうなのだが
描写が実にリアルで、読んでいて肌触りとして伝わってきて
沖縄の強い日差しと重なってよけいにジリジリと迫ってくる。
目をそむけたくなるような描写もなかにはある。
また、当たり前だが沖縄の方言が頻繁に出てくる。
沖縄の言葉をよく知らない自分にとってかなりきつかった。
素直に言えば、自分はこの小説をちゃんと読めていないのだ。
でも、この読めない沖縄の言葉を通じて
本書の世界にさらにのめり込んでしまうことになる。


自分が沖縄に行ったのはいつのことだろう。
もう20年くらい前になるか。
その時は小刻みな時間に追われながら観光名所を巡っただけで、
国際通りで飲んだ泡盛が格別に美味しかったと覚えているくらい。
そんな調子だったので、ほぼ同じ時期に
このような沖縄小説が書かれていたなどとは思いもよらない。


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平和通りと名付けられた街を歩いて
目取真 俊
影書房 2003年


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