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2016年12月3日土曜日

読了メモ「文学が好き」荒川洋治



読了。

この本も、タイトルからすると
硬い文学評論とイメージされるけれど
意中の本の紹介だったり随想だったりとそうでもない。

その中に、「言葉がない」というエッセイがあった。
世には様々な語句や表現があり
ある分野の様子や状態を表す言葉は実に豊富にある。
一方で、そうでない分野もあることも確かだ。
たとえば、「批評」。この「批」という文字には
「うつ」とか「なぐる」「せめる」という意味が原義にあるそうで、
著者としてはもう少し程度のやわらかいきつくない言葉が欲しいという。
他にも、「さわやか」「可憐」
「人生」「幸福」「自然」などの類語が不足していると。
言葉に抱く感覚が個人個人では違うなかで、その不足にぶつかった時に
そこをどう補っていくかと思考するのは楽しくもあり苦しくもある。

今回もそうだったが、詩を書く人の文章って
心が落ち着く。穏やかになる。
ここ数年、本を何冊か読んできて、
あっ、これって素敵だな、いいなと感じてきたものが二つある。
一つは児童文学。もう一つは、詩人の文章だ。
特に詩人の文章の行間がいい。

茨木のり子さんの詩集を紹介する話があった。
いつまでもいい詩集「倚りかからず」
詳細は触れないけれど、最後にあった
この詩は、読者をゆたかにもする。まずしくもする。
という結びが、この詩の存在感をぐっと持ち上げている気がする。


巻末には著者が選んだ「一年一作百年百編」というコーナーがある。
1900年から1999年の百年間で発表された文学作品(主に小説)から
一年一作の条件で百編を選んだもの。
同じ作家は二度選ばない条件で選出したそうだ。
2〜3行の紹介文つき。
これから読む本の参考にしたい。

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文学が好き
荒川洋治
旬報社 2001年





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