2021年9月6日月曜日

読了メモ「リトル・ピープル ピクシー、ブラウニー、精霊たちとその他の妖精」 ポール・ジョンソン



読了。

リトル・ピープルというと、
村上春樹さんの「1Q84」を思い出してしまうのだけれど
こちらは、主にイギリス、アイルランドなどで
語り継がれている精霊や妖精たちのお話です。
なかには、魔女や人魚、グレムリンなども含まれています。

そもそも、妖精自体の存在がわからないのに
妖精を見通す力を持つ人間はある一定数存在し、
その人たちは、心が正しい人というお墨付きまでついてるようです。
ちなみに、妖精の姿を見るには、よい時間帯があるそうで、
1日のうち、日の出、正午、日の入り、真夜中の四つの時間だそうです。
特に、春分の日、夏至、秋分の日、冬至、はよく見られるそうです。

もうすぐ秋分の日ですね。探してみませんか。
日本だと「座敷童」あたりでしょうか。
座敷童がいる家は栄えると言われてますよ。

そんな妖精を家にとどめておくためのルールは、
暖炉を綺麗に保つことだそうです。
そうすることで、彼らは家周りの家事や雑用をよくしてくれるとか。
使わなくなった古い暖炉でも、閉じられた煙突の周りであっても
綺麗にしておかないと、彼らはその家に
とどまることができないのだそうです。
日本だと、囲炉裏とかストーブとかかな。

では、普通一般の市井の人々が
妖精をひとめ見たいと思ったらどうすればいいのでしょう。
それは、みなさんもよくご存知の
クローバーの葉っぱを探すのです。
四葉は、彼らの姿を見ること、
五葉は、彼らの存在についての知識や理解につながり、
六葉は、彼らの秘密を告げられること
を示しているそうです。
自分は、四葉までは見つけたことあるけど、姿は見たことがないなぁ。

ただ、妖精についての気づきは
現世の考え方の延長線上ではなく、全く異なる感情となって
もう一つの世界に気づくことなのだそうです。
想像もしていなかった
新しい世界が目の前に見えてくる。
なんか、夢があっていいですね。

そんな妖精に会ってみたいと思うこの頃です。

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リトル・ピープル ピクシー、ブラウニー、精霊たちとその他の妖精
ポール・ジョンソン 藤田優里子訳
創元社 2010年

2021年8月27日金曜日

読了メモ「ダイナソー・ブルース 恐竜絶滅の謎と科学者たちの戦い」 尾上哲治




読了。

題名からすると、ハリウッド映画のような
派手な展開をイメージしそうだが
地道なサイエンスノンフィクション。

今から6,600万年前の白亜紀末期に
恐竜の大量絶滅があったわけですが、
その原因は、巨大隕石が地球に激突したことに起因するという
天体衝突説が有名です。

だが、それに異議を唱える科学者もいます。
その理由として、白亜紀と次の新生代の境目の地層には
それまであった恐竜の化石が見つからないというのです。
天体衝突と恐竜絶滅は時間的にずれているのでないか
という説が浮上してくるわけです。

境目の地層には、地球上にはない「宇宙塵」が発見されたり
事実、180kmにもおよぶクレーターの後が
メキシコで発見されており、天体衝突があったのは確かなようです。

ただ、天体衝突だけでなく、それ以外の要因はなかったのか、
という科学者たちの論争が繰り広げられていきます。

有力候補にあがったのが、天体衝突と
相前後して起きたインドのデカン高原での
大規模火山噴火活動とそれに伴う気候変動。
硫酸雨が降ったと言われ、
カルシウムの殻を持つ生物のみならず
恐竜の卵なども死滅していったという説がでてきます。
その他にも、プランクトンから始まる食物連鎖が絶たれていく説、
二酸化炭素で地球が充満する説など
いろいろな説が検証されていきます。

恐竜を絶滅に追い込んだ犯人は誰なのかは、
最終的には依然としてはっきりしません。
しかしながら、自説の正しさを証明するべく
各々の科学者たちが執拗に突き詰めていく研究活動や
学会だけでなくサイエンス誌やネイチャー誌などを巻き込んだ
メディア上での駆け引きなどもあって、
面白く、エキサイティングな一冊でした。


地質学や古生物学は気の遠くなるような
ゆっくりとした時間軸上の話なので、
なかなかピンとこないかもしれません。
でも、我々、人類が繁栄しているこの時代も、
長い年月をかけて、いつかは終焉の時が来て、
次の新しい世界が始まるのだと思います。
ゆ〜っくりとその時に向けて
もう地球は動き出しているかもしれませんね。

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ダイナソー・ブルース 恐竜絶滅の謎と科学者たちの戦い
尾上哲治
閑人堂 2020年

2021年8月22日日曜日

読了メモ「罪と罰」ドストエフスキー



読了。

いやはや、読みきれるとは思ってなかった。
というか、そもそも一生のうちに読むんだろうか?
とまで思っていた作品。

ロシア文学は、ツルゲーネフの「初恋」や
トルストイの「イワンのバカ」くらいしか
読んだことがなくて、
いわんやドストエフスキーなんて。
と、今までかなり敬遠していたのですが、
新訳版も出ているし、いっちょトライしてみるかと思い立てば、
あれよあれよと、上・中・下と読み終えていました。

読破に大いに役立ったのは本書についてくる栞で、
栞の両面に主な登場人物と簡単な素性が書かれているのです。
ロシア人の名前は覚えづらいのが最大のネック。

タイトルが「罪と罰」なので当たり前なんですが
これは犯罪小説です。殺人事件がおきます。
でも、探偵とかは出てこなくて謎解きなどは特になく、
主人公や取り巻く人々の思惑、
周囲の視線のしたたかな矛先、
貧富の格差からの蔑み、諦め、偏見、
などが、えげつないくらいに描かれていて、
人ってこんな風になっちゃうんだぁとか
いったい何を狙ってそこまでするんだろうか
という人間の欲の深さを感じながら読んでいました。
それに、警察や検察、国家という権力の
市民への圧力なんかもボディブローで響いてきます。
そんな辛い世間を渡る中でも、
愛する人への想いの尊さに心救われるところもありました。

登場人物の名前が難しいのは、
先にも書いた栞の活用で解決できるし、
新訳版はやっぱり読みやすいと思います。

次は、「カラマーゾフの兄弟」かな。
こちらも、学生時代に何度挫折したことかw

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罪と罰
ドストエフスキー
亀山郁夫訳
光文社 2021年 



2021年8月11日水曜日

読了メモ「日本のいちばん長い日 決定版」 半藤一利



読了。

1945年8月6日に広島、8月9日に長崎へ原爆が投下された。
そして8月15日に終戦をむかえる。
本書は、8月15日正午の天皇陛下の国民に向けた
ポツダム宣言受諾通告放送までの
二十四時間を追い続けたノンフィクション。
1967年には映画になり、2015年にはリメイクもされている。
自分は映画を二作とも観ていたが、原作は今回初めて読んだ。
ちなみに、陸相役は、一作目は三船敏郎、リメイク版は役所広司が演じていた。

日本近現代史については、著者の半藤一利さんの作品が
とても判りやすく読んでいて面白いと思っている。
鬼気迫る状況に迫真するかと思うと、
柔らかい描写で読者にやさしく説いてくれる。
本書では、特に脚注の部分にそれがある。
半藤さんの「昭和史」(平凡社)などもお勧めしたい。

本書の構成は、前日の8月14日火曜日の正午から
一時間ごとに進んでいく形式。
まさに目の前の出来事のように没入して読み込んでしまった。
日本の敗戦は、もはや逃れようもない現実であること、
ポツダム宣言を受諾し無条件降伏しなければ、
更に国民を災禍に追いやること、
などは理解しながらも、これまで国民や多くの部下に
犠牲を強いてきた軍部、特に陸軍の反発は強く、
陸相の国体護持を思う気持ちは熱いほど伝わってくる。
しかし、もはやそれは過去のものなのだ。

皇居を守護すべき近衛部隊が、
籠城クーデターを蜂起するという青年将校の姿には
かつての二・二六事件を想起させるが
こちらもはじめから崩壊することは目に見えていた。

また、随所で天皇陛下自身が
国民や軍部士官に自らが直接語りかけることを望み、
反乱分子の前にさえも臨もうとする姿勢は
日本という国が大きく変わっていくんだという印象を抱く。


今でも、テレビなどで、8月15日正午の放送から
”堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ”
という天皇陛下の肉声を聞くことがあるが、
本書で、初めてその全文を目にすることもできた。

まさに歴史の転換点に接することができたと感動すら覚えた。
歴史書を読むことは、こういうダイナミズムに
接することができるから、人々を惹きつけるのだと思う。

そして、当たり前なことだが、
戦争は二度と繰り返してはならない。
これにつきることを改めて思う。

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日本のいちばん長い日 決定版
半藤一利
文藝春秋 2021年

2021年8月4日水曜日

読了メモ「ジェダイの哲学 フォースの導きで運命を全うせよ」ジャン=クー・ヤーガ

 

読了。

みなさんは、スターウォーズを全作観ましたか。

自分は、Epsode 4、5、6、1、2、3 と観て
そのあとも、観たには観ましたが
あまり印象に残っていません。
やっぱり、4、5、6が一番面白かったかな。

本書は、ちょうど4、5、6を観ていれば
ジェダイの騎士やフォースにまつわる
なるほどと頷く話や、蘊蓄、絵解きをしてくれます。
微妙に1、2、3を批判していたのも面白い。

まぁ、映画の宣伝ブックといえばそれまでですが
なかなかいいことも言ってますよ。
いくつかピックアップしてみます。

まず、一人前のジェダイになることについては、

    この現実は、きみが作り出したものなのだから。
    どんな意識がこの現実を作りだしたのか考えてみるがいい。(p76)

 大切なのは、くもりや偏見のない、真の自分を見つけられるか。 
    他者に刷り込まれた価値観を捨てる覚悟があるかどうかなんだ。(p89)

なかなか、響きますね。自分に自信を持てということか。
自分自身を見つめ直せということなのでしょう。

そして、

    「やる」か「やらぬ」かだ。「やってみるはない」(p96)

これは、Epsode5で、ヨーダが
フォースの修行をしているルークに説く名言ですね。
かなり強いメッセージとして受け止められます。
ナイキ風に言い換えれば、”Just do it !” でしょうか。
これも好きな言葉です。

また、ジェダイが戒めるダークサイドについては、

    きみが与えた喜びが、きみ自身に喜びをもたらすように、
    きみが抱いた恐れは現実の恐れとなってきみの前に現れるだろう。(p109)

    恐れることは恥ずかしいことじゃない。人は誰でも恐れる。
    その感情を否定せず、認めてあげるんだ。そうすれば恐れは解放される。(p135)

この部分は、「恐れ」を「不安」に置き換えてみると
もっと身近に感じることができると思います。
恐れをコントロールできれば、ダークサイドに陥ることはないと。
そのためには、恐れをそこにあるものと認める。
以前に「不安のメカニズム」という本を読みましたが、
その本にも同じような記述がありました。

最後に

    人間が本当に探しているのは、今、この瞬間を生きている実感なのだから(p267)

今を大切にというこですね。

以上、諸々ピックアップしてみましたが、
いかがでしたでしょうか。

もちろん、本書を読んだとしても、フォースを使って
Xウィング戦闘機を沼から引き上げるなんてことはできません。
でも、ちょっとだけなら、フォースの力を感じることは
できるんじゃないかな。

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ジェダイの哲学 フォースの導きで運命を全うせよ
ジャン=クー・ヤーガ
学研プラス 2018年

2021年7月30日金曜日

読了メモ「わたしはこうして執事になった」ロジーナ・ハリソン


読了。

執事の世界。
なんとも自分とは縁がない、遠くて高貴で品が良く、
別な見方では、窮屈な世界を想像します。

本書は、執事の世界を生き抜く五人が語る
それぞれの職業人生です。

読んでまず気がついたのは、
執事になるための敷居は意外と低いということ。
入門したては、最下層の下足人ですが、
本人のやる気と、良き先輩執事、
そして理解あるご主人様に恵まれると、
どんどん昇格していきます。
ある程度出世した執事の業界はとても狭く、
本書に登場する五人にも共通する執事仲間がいたり、
お仕えする貴族や大使館の裏話が飛び交います。

ご主人様が旅行などで屋敷を空けることがあると、
執事たちは、普段できない仕事をこなした後、
思い切り羽を伸ばし、夜遊びにも行くそうですが、
ご主人様がいないと、チップがもらえないというデメリットがあります。
執事を目指す人々は、貧困層から叩き上げでなる人が多く、
実入りについてはかなりシビア。
チップが渋いと、お仕え先を替えることもよくあるようです。

実際、執事の世界は人手不足のようで、
ご主人様の機嫌次第でクビになっても
大執事から目をかけてもらっていれば、
職場復帰は日常的にあったようです。
ヘッドハンティングも珍しくありませんし
お仕え先を替えていくのは立派なキャリアアップです。
一方、職を辞する時は、ご主人様、
特に奥様・ご夫人から給料アップを条件に
”君が必要だ”と慰留されたり、
また、もう高齢だからと引退を申し出ても
”年齢は気の持ちよう”、”きしむ門ほど長持ちする”
などと言われ引き止められることもあるそうです。

そんな執事たちも、自己主張すべき時はしました。
自分たちは奴隷ではない。
命令には従うが、使用人とご主人様たちとは
確立された行動規範に従って、
どちらもルールを破れば罰せられると。

最後に、ある執事がこぼした印象的な言葉がありました。
ちょっと長いですが引用します。
完璧な人間なんてどこにもいないことは、
自分の生き方を顧みるだけでわかる。
英雄も従僕の目にはただの人という言葉があって、
それは確かにその通りだが、
ずっと英雄に仕えつづけていたら退屈でやりきれないに違いない。
主人と使用人のあいだには、理解と信頼があればいいのだし、
分別のある人間ならそれ以上は求めないはずだ。(p290)

かつての大邸宅に仕える時代はもう過去のものになっています。
それでも、本書を読むとイギリス執事の誇り、
使用人人生への気概を感じることができました。

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わたしはこうして執事になった
ロジーナ・ハリソン
新井潤美監修、新井雅代訳
白水社 2016年



2021年7月23日金曜日

読了メモ「ハトはなぜ首を振って歩くのか」藤田祐樹


読了。

完全二足歩行をする動物とは?

もちろん、ヒトです。
ただ、地球上にはもう一種類います。
本書の主役となるトリです。
自分も、読んでそう言われるまで気がつきませんでした。
チンパンジーやカンガルーも二足歩行はしますが
前足を使って歩くことがありますので除外されます。

トリは翼を使って空を飛びますが、歩く時は後ろ足二本だけです。
ダチョウにいたっては、時速70キロ近いスピードで走ります。
街中にいるスズメはホッピングすることが多いですが、
カラスは見事に歩き回る姿をよく見ることができます。

さて、読み進めていくうちに核心部分が迫ってきます。
ハトはなぜ首を振って歩くのか。
実は、首を振って歩いているように見えるだけで
頭は静止しているというのです!!
ちなみに、田舎に帰った時や、小学校のニワトリ小屋で
ニワトリを捕まえた時、ニワトリを前後に動かすと
頭が止まっていたように見えたのを覚えていませんか。
以下、引用します。

 ハトが歩くと、体はおおむね一定の速度前進する。
 体が前進しているのに頭を静止させるためには、
 首を曲げて縮めなければならない。
 首をある程度まで縮めると、
 今度は首を一気に伸ばして頭を前進させる。
 この動作の繰り返しが、歩行時の首振りの実態だったのである。
 (P41)

次に、なぜハトは頭を静止させようとするのかという疑問です。
答えは、景色を目で追っているから。
ハトの目は顔の横についているので
流れる景色を見るためには、頭を一瞬でも静止させる必要があるのです。

本書の命題の主な解答は以上ですが
もちろんこれで、謎が全て解決したわけではありません。
首を動かす代わりに、ヒトと同じく
目玉をキョロキョロさせればよいではないか。
首振りのタイミングと歩行との関係は。
カモやカモメなどはなぜ首振りをしないのか。
足の長いフラミンゴやサギなどは首を振るのか。
トリの祖先である恐竜は首を振って歩いていたのか。
などなど。

ハトがなぜ首を振って歩くのか、
なんと些細で、気にも止めない事象かもしれませんが、
こんなところから科学って発展していくのでしょうね。

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ハトはなぜ首を振って歩くのか
藤田祐樹
岩波書店 2015年