2024年10月26日土曜日
読了メモ「冷たい校舎の時は止まる」辻村深月 作
2024年10月14日月曜日
読了メモ「日本列島改造論 復刻版」 田中角榮 著
2024年10月4日金曜日
読了メモ「ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人」 エドガー・アラン・ポー 作 河合祥一郎 訳
読了。
ミステリーの古典。
世界最初のミステリー小説と言われる「モルグ街の殺人」を含め、
全11編が収録されています。
いったいどんな展開になるのだろう…、
現代のミステリーとはちがったどことなくお洒落な雰囲気が漂う作品なのかな
と思いきや、え〜!こんな結末だったのかぁ〜〜〜と驚き!
途中の謎が謎をよぶ展開では、どんな解決を見せてくれるのかドキドキするし、
現場に現れた人物の証言を一つづつ整理しての検証も
読む側を引き込んで没頭させてくれます。
が、よもや真相が。。。。
ある意味、ありえないどんでん返しといえるかもしれません。
ほかの謎解きというかファンタジックなお話は、
どちらかというとエログロナンセンス系でした。
日本の平井太郎さんが感銘を受けて
ペンネームにポーの名前をもじって使ったこともうなずけるものばかり。
ミステリーの謎解き役には、
頭脳明晰な探偵と少しとぼけてるけど行動力のある相棒がでてくるという
いまのミステリーでも定番の人物設定ができあがっていました。
これものちの明智小五郎や小林くんにつながっていくんだろうなと思いました。
表紙の装丁もロートレックとお洒落な感じですが、
中身は江戸川さんチックなお話ばかりです。
お話だけではなく詩が3編ほど収録されており、
翻訳も絶妙で不思議なリズムと音韻の響きが不穏な雰囲気を醸し出してもいます。
暗号解読の「黄金虫」というお話も面白かったなぁ。
未読な方は是非。
2024年9月18日水曜日
読了メモ「地球生命圏 ガイアの科学」 J.ラヴロック 著 星川 淳 訳
読了。
地球全体を一つの生命体ととらえて環境問題を論じている。著者のラヴロック氏はNASA宇宙計画の共同研究者として火星の生命探査計画に参加したのをきっかけに本書を書き上げた。
地球の生物・大気・海洋・地表は、単一の有機体とみなせる複雑なシステムであり、生命にふさわしい場所として保つ能力を地球はそなえているという仮説からスタートする。人類や他の生命は、この地球を快適な住み家として維持する力をもった巨大な生き物の部分であり、お互いがパートナーであるという見方だ。
生命が地球に生まれる前、地球はどんな状態だったのか。隣の火星と金星に生命がないのに、なぜ地球は生命を生み育てることができたのか。生命が誕生してから35億年、ほんの短期間でも生命にとって100%不向きな時期はなかったし、海洋が全て凍ったり沸騰したりしたことはなかった。氷河期の寒波も北緯45度以北と南緯45度以南の地帯を襲っただけで、地表の70%はその氷河に覆われた地帯に入っていなかったという。
地球が、生命にとって最適な環境を提供しているかについての論証は、大気組成そして海へと展開する。その海での問いは象徴的だ。
「海はなぜもっと塩辛くならないのか」(p169)
それは、海洋の塩分が生物学的なコントロールをうけてきたから。地球という巨大な生命圏のなかで長い年月の時間軸で調節をはかってきたということだ。
そして、都市化や工業化によって人間が環境に与える汚染問題が投げかけられるのだが、賢明な方法を用いれば他の生物種を自然生息地から追い立てることなく食糧生産することができることを例に挙げ、理知的な組織と高度なテクノロジーが必要と説く著者は、
「人間のテクノロジーが人間にとって破壊的だった
ということになる可能性はあるが、
現在または近い将来における工業活動のレベルで、
全体としての地球の生命が危うくなる根拠は薄い」(p195)
と言っている。これは意外な論旨展開だった。
ここまで読んでくると、相当に長い時間がかかることは前提としながら、人間が環境を汚染してしまっても、地球環境は自らの調整維持機能で回復し存続していくと読めてくる。しかし、最後に問題を突きつけられる。それは「人口増加」問題。著者は世界の人口が百億人を超えたあたりで、一人あたりのエネルギー消費が増大した場合、牢獄のような地球となるか、超大量死の末に別の生存者に地球を渡すことになると言っている。
全体を通して、人間がもたらす地球環境への汚染問題は恒常性をもって回復維持されるトーンではあったが、あとがきで訳者が補足的に「人間に対する地球自身の声」を代弁していたので引用する。自分・あなたが人間を指し、私が地球のことです。
母なる地球は我々人間を見捨ててはいないということでしょうか。
「むずかしいことではありません。
自分が地圏、生命圏、大気圏をあやなす
〈私〉という生態の一部であることを認識し、
〈私たちすべて〉の健全な進化を
めざしてくれればいいのです。
あなた方の未開な文明が、その逆に生命を抑圧し、
殺害している現状を打破してください。
熱核戦争の危険と、放射能廃棄物を未処理のまま放棄している
という事実の原因をつきとめ、解決の工夫をすること。
これがあなた方現行人類にさずけられた公案です。」(p280)
2024年9月8日日曜日
読了メモ「仮面の告白」 三島由紀夫
前回、三島さんの作品を読んだのは去年の6月。
その時はエンタメ小説っぽいサスペンス&ミステリーチックな作品だったが、
今回はまたガラリと違う。
半ば自叙伝的なもので、三島さんの生々しい半生を素手で握るような感覚を味わえる。
冒頭、「美」について「カラマーゾフの兄弟」からの引用から始まる。
この冒頭を読みこむだけで本作の異様ともいえる雰囲気に飲み込まれてしまう。
本編のお話は、幼少期から青年期までのタイトル通りの「告白」、
あるいは「吐露」ともいえる。
幼い頃からの父母と別れた生活、同級生への倒錯した感情、
強靭な肉体への憧憬と嫉妬、異性に対する感覚のズレ、
運命の女性との出会いと執着心、戦争での死の教義、そして絶望的な苦しみ。
一人の青年の暗澹で戸惑い迷う生き方を
ここまで読んでしまっていいのだろうかと思うくらいだった。
それに、そんな心の蠢きを表現している描写が素晴らしい。
えっ、こう書くのかぁ。。と唸ってしまうところがいくつもあった。
三島さんは1970年の45歳の時に市ヶ谷駐屯地で自決するわけですが、
この作品が書かれた1949年、当時24歳の時に、
三島さんの心と体の中に自決に関する朧げなイメージというか、
ぼんやりとした霧のようなものがあったのではないかと思わせられる。
読み終えてあらためてそう感じられるのは自分だけではないと思います。
いかがでしょうか。
2024年8月30日金曜日
読了メモ「ウルトラマンの東京」 実相寺昭雄
- 「真珠貝防衛指令」
- 「恐怖の宇宙線」
- 「地上破壊工作」
- 「故郷は地球」
- 「空の贈り物」
- 「怪獣墓場」
- 「狙われた街」
- 「第四惑星の悪夢」
- 「円盤が来た」
2024年7月読了本 5冊
『「80年代」と書いて、「EPICソニー」と読む。』
自分も学生だった時代を思い出す。
2024年8月23日金曜日
読了メモ「星の子」 今村夏子
読了。
好きな現代作家さんの一人、今村夏子さんの作品。
お話全体に常にただよう不穏な空気感がなんともいえない。
中学3年生のちひろは、小さい頃は体が弱かった。
両親は、ある人から教えてもらった「金星のめぐみ」という水を飲ませたり、
その水をタオルに浸して体を拭くなどし、不思議とちひろは体調を回復していく。
両親たち自身の健康にも役に立っていると信じて疑わない。
味も他の水と違うというのだ。どうやら甘いらしい。
しかし、これらを不審に思った親戚のおじさんが、
この水を全て水道水に入れ替えてしまう事件がおきたりする。
ちひろは、学校でも辛くて明るい希望の見えない日々を過ごす。
憧れの先生の似顔絵を描くのだが、
友達には計算用のメモ紙にされてしまうし、
当の先生からも叱責されて救いようのない淵に立たされる。
隣に座ることになった転校生にも翻弄されてしまう。
そして、家族は金星のめぐみにまつわる信者が集う「星々の郷」という宿泊地で、
歌を歌ったり、集まった人たちとの交流会に参加する。
一見、楽しそうにも見えるのだが、
いろいろな考え方の人がいて、
ここでも読んでいる側としては心が落ち着かない。
最後は、ちひろと両親で流れ星を見るシーンで終わる。
果たして、この家族は本当に幸せなのだろうか。。。。
最初に読んだ今村さんの作品は「あひる」だった。
このときも読んでいて言いようのない澱のようなものを、
心底に抱えながら読み終えた覚えがある。
今回も存分に今村ワールドを楽しめた。また違う作品を読んでみたい。
なお、本書の巻末には、今村さんと小川洋子さんの対談もある。
2024年8月12日月曜日
読了メモ「怪談 不思議なことの物語と研究」ラフカディオ・ハーン作 平井呈一訳
読了。
日本を愛した小泉八雲ことラフカディオ・ハーン氏による怪談集。
子どもの頃にもよく聞いたことのある
「耳なし芳一のはなし」や「雪おんな」なども、
あらためて読み直してみるとこれが結構こわい。
耳なし芳一などはまずもってスプラッターだし、
雪おんなはナイフのような切れ味でこっちに迫ってくる。
充血した真っ赤な眼が目の前にあるような勢いだ。
「ろくろ首」の話もあるのだが、
自分が知っていたろくろ首とはその形態が異なるのには驚いた。
水木先生の漫画などにあるとおり、
ろくろ首といえばニュル~っと首が長く伸びるものだと思っていたがここではそうではない。若い女性のろくろ首もいるにはいるが、
親分格のろくろ首は鬼のような形相をした山賊のような男で、
しかも首は胴体から離れていたりする。
他にも 長い年月にわたり許嫁の霊が憑いてくる話や
狸がのっぺらぼうになって人を化かす話などがあり、
いすれも日本の怪談独特の怨念や執念のようなものが
お話の向こう側に見えている。
一通りの怪談が終わったあとには、
「虫の研究」といって、「蝶」「蚊」「蟻」についての考察がある。
これは怪談ではないのだが、虫たちの生態を見つめることで、
人間の生き方や今後のあり方に対する意見を述べている。
怪談も面白かったが、個人的にはこの虫に関する研究の話がよかった。
蟻にいたっては分析の結果、蟻社会は超人的に進化しているという。
人間は人口増加という圧迫に対峙し、
蟻のような社会を構築することになるのではないかというくだりは、
怪談とはまたちがった怖さを感じてしまった。